岡山地方裁判所 昭和25年(ヨ)105号 決定
申請人 全日本金属労働組合岡山支部汽車会社分会
右代表者 組合長
被申請人 汽車製造株式会社
一、主 文
申請人の申請は之を却下する。
申請費用は申請人の負担とする。
二、理 由
申請人代理人は申請の趣旨として「被申請人は別表記載の申請人組合員に対し同表通りの昭和二十五年四月十八日以降同年五月十七日迄の賃金を仮に支払え」との裁判を求め、其の理由の要旨は、申請人は全日本金属労働組合岡山支部に属する分会であり被申請人は岡山製作所の従業員を以て組織せられる労働組合である。被申請人は肩書地に本店を置き東京、大阪、岡山に製作所を設置しているが、この各製作所毎に労働組合が組織せられ其の各自が全日本金属労働組合の分会になつていると同時に三者合して全日本金属労働組合汽車会社分会連合会(以下単に連合会と略称する)を組織している。ところが被申請人は昭和二十五年三月二十六日申請人に対し、同月二十七日から団体交渉(以下単に団交と略称する)を開きたいと申入れ、二十七日団交の席上岡山製作所の一時休止と従業員約四百六十名の解雇を申入れた、而して同月二十九日連合会に対し岡山製作所の操業一時休止について中央交渉委員会(以下単に中交と略称する)を開催する希望があれば被申請人も之を開催してよいと申入れた。右の経緯に基き岡山に於ては昭和二十五年三月二十七日から数回団交が開かれ東京に於ては同年四月四日から四日間中交が開かれたが結論を出し得なかつたのに被申請人は同年四月十七日申請人組合員を解雇するに至つた。そこで申請人は被申請人の為した右解雇が連合会と被申請人との間に締結された労働協約に違反する無効のものであることを理由として同月二十四日岡山地方裁判所に解雇の効力停止等の仮処分申請を為し同月二十六日附を以て「右解雇の効力を仮に停止する旨並に被申請人が中交を開き本問題に付て再交渉をせねばならぬ旨」の仮処分命令を得た。申請人は昭和二十五年四月初から今日に至る迄工場再開、作業開始を求め労務を提供している。而して被申請人岡山製作所は現に半製品を有し其の完成の為めの仕事を有しているに拘らず之を申請人組合員に為さしめぬ状態に於ては被申請人は申請人組合員に対し賃金の支払を為さねばならぬ。仍て申請人組合員全員は被申請人に対し昭和二十五年四月十八日以降同年五月十七日迄の賃金(別表)の支払を求めるため本訴を提起すべく準備中であるが被申請人が解雇の有効を主張している現在の状態に於ては其の確定には相当の日時を要すべく斯くては資産なく組合の闘争資金によつて僅かに主食の配給を受けている申請人組合員にとつては償うべからざる損害を蒙ること明であるから茲に申請人は被申請人に対し別表記載の組合員(專従者立川勝一外一名を除く)に同表通りの昭和二十五年四月十八日以降同年五月十七日迄の賃金を仮に支払えとの裁判を求めるため本申請に及ぶと謂うにある。
仍て按ずるに申請人が其の所属組合員の被申請人に対して有すると主張する賃金支払を求める権利は何れも其の所属組合員個人に属する権利であつて既に発生したこれ等の権利について申請人は当事者として右組合員に支払はるべきこれ等賃金を被申請人に訴訟上請求し得る権能を有しないものと解すべく、従て申請人はこれ等の権利を訴訟に於て追行する適格を有しないものと謂わねばならない。然らば申請人は其の所属組合員の右権利に付て保全の請求を為す適格なく申請人の本件申請は爾余の点につき判断する迄もなく既にこの点に於て不適法として却下すべきものとする。申請費用の負担については民事訴訟法第八十九条、第九十五条を適用し主文の通り決定する。
(裁判官 中島貢 菅納新太郎 辻川利正)
別紙目録<省略>